BUILD COMMUNE

はじめに

古くは平城京の前都、藤原京の存在した歴史のまち、奈良県橿原市で地域の公共建築や教育施設を設計、建設を行う平成建設のオフィス共用部分の場のリブランディング。企業のパブリックスペースとしてではなく会社の未来を体現する場、人を育てる場を作りたいという思いから空間のリニューアルと運用企画を依頼いただいた。

受け継ぐものはなにか

既存の空間に立った時、最初に見える美しい山々。その景色は1000年以上昔に万葉集にも歌われた大和三山。その全てが見渡せるフロアが社員の共有スペースであり、会議室として使用するフロアだった。現況では使用されず倉庫として利用されており、今後の社員増員のため、また新入社員や研修などのため広いスペースを必要としての改装を相談された。

大きなスペースの活用として、社員のための空間のみではもてあますこと。また景色を社員だけのものとするのは勿体無い。そんな思いがあり社外への開放ができないものかと運用方法の検討を進めることとなった。

こどもたちのための、スタディスペース

近隣は小学校、中学校含め複数の学区が重なる地域だ。最近は図書館などで子供達がテストの勉強を行うことを禁止しているところが多い。カフェでは長時間落ち着いて勉強ができない。子供達を安心安全に勉強させておける場所、そんな空間が必要とされていると教育関係者から聞かされた私たちは、社員も学べて、地域の子供達も学べる。そして奈良や企業のことを知ってもらえる場所にするのが最適ではないかと考えた。

ベースは企業の占有スペースであり、会議やリクルート、社員の休憩などで使用する傍ら、一部のスペースを会員カードをもった子供達が会社の営業時間に自由に利用することができる。しばりを細かく設けず、新しい試みとしてスタートすることが決まった。

ネーミングに込めた想い

施設の名称はBUILD COMMUNEという。BUILDは企業理念であり創るということだが、その根底には人が作る、人を育てる、という人を重視する企業姿勢を表した理念。COMMUNEは共同体のような意味合い。古くからお付き合いのある取引先や顧客、ここを利用するかもしれない地域の学童たちも含んでひとつのCOMMUNEであると考えた。

コンセプトのアウトプット

既存建築との兼ね合い、法的与件もあり空間の一部は既存のままで使用する必要があった。また従来にないような空間をオーナーが求めていたこともあり以下の3点を空間演出の指針とした。

◯ 大和三山の景色を活かしたレイアウト計画

◯ 建設会社らしい、建材を知れる、華美でないデザイン

◯ 勉強、会議、会話の機能を満たす空間

元々5階以上の建築が少ない盆地であるがゆえの山なみと田畑の緑と青のグラデーションの美しさ。私たちは「柱の存在感を消すこと」と「窓の高さに造作物を作らない」2つに気をつけた。そうすることで景色を邪魔するものがなく、時間や季節の移り変わりをダイレクトに感じる空間になった。

「あえてデザインしないこと」はオーナーと空間を作っていく途中で気づいた大切なポイントでした。大理石、輸入無垢材、タイルなどの高額な輸入建材を使わず、工業製品、または一般流通する建材を使用した空間。長い工事期間だったので図面ではなく、現場で人と人の関わりで様々なことを話し合う進め方はおおらかな奈良っぽくてとてもよかった。

床は剥離あとが思ったより綺麗だったのでそのまま使用。柱は鉄骨の色をそのまま見せて良いか…ということに。使用する木材はほとんどが奈良の銘木である杉の集成材であり、1枚では使えないものでも複数の角材を並べてしか現れない木目を活かしたよい材料だと思う。

倉庫に眠るコンクリートブロックをキッチンの腰に小口をならべて使用するなど普段は裏方、もしくは安価な材料として扱われる素材に想いを込めること、再認識してもらうことが建設業の本懐にもつながると考え様々な「裏方建材」を採用した。

天井は既存の仕上げのまま、既存の蛍光管の掘込みを利用して新たにライン状のBOXを設置。BOXは合板を奈良の名産である書道用の墨を使って木工屋さんに墨黒に染色いただいた。使用したスポットライトはまだ使用できるのに廃棄される予定だったものを買取り、リユースした。

メインのビッグテーブルは新入社員などのリクルーティング、また社員の大会議として使用し、会社としての使用が無い場合に小学生などの自習に使用が可能なエリアとなる。多くは無いが、社員の集まりなどで中央の櫓型のキッチンで社長自ら料理を振る舞うなども考えているそうだ。

トイレ、ストック、会議室の間は完全に仕切らず、OPENなブックウォールを天井まで設置して目隠しの役割と空間に賑わいを与えた。セレクトした本はデザイン、建築、また子供達が興味をもてるようなもの。本棚の裏にある会議室はフルフラットなドアで隠され、一般の利用者は気づけない仕掛け。

カウンターやベンチは社員同士の打ち合わせや弁当を持ち込んでの休憩などのフリースペース。社員が資格取得のため集中して勉強できるBOXエリアも3つあり、学生もここで集中して勉強に使用することができる。3つのブースはBUILD COMMUNEから見渡せる大和三山をモチーフにネーミングした。

やさしい、グラフィックとサインデザイン

室内、ロゴなどのグラフィックは以前からお世話になっているCAICO DESIGNの明石さんに依頼。

見やすいが、押し付けがましく無い…というのは私の中で方針としてあったが、人が中心の施設を表現するため、BUILDのキービジュアルからインスパイアされた文字を人に見立てたグラフィックとして提案いただいた。

グラフィックをどう空間に落とし込むかもよく相談して決定、決してきらびやかな仕様ではないですが、みたときにほっとするようなグラフィックデザインにしていただけたように思います。

平成建設 公式WEBSITE

BUILD COMMUNE 公式WEBSITE

CLIENT

平成建設

BUSINESS SCOPE

  • MARKETING & PLANING
  • SPACE DESIGN
  • DESIGN DIRECTION
  • PHOTOGRAPHER

    UEMURA NORICO